6月25日は日産自動車の株主総会でした。
ご存じのとおり日産は仏ルノー・三菱自動車と企業連合を組んでいます。
しかしリーダーで取りまとめ役だったカルロス・ゴーン氏の失脚を契機としてルノーとの関係見直しが急務となっています。
(ひとことで言うとルノーは日産との経営統合を画策し、日産がそれを拒否しようとしています)
総会では本件に関する質問が多数寄せられ、株主の皆さんの関心の高さが伺えました。
またルノーに対して不信感を持つ個人株主が多いようで、総会に出席していたルノーのスナール会長に対しては厳しい質問がいくつも投げ掛けられていました。
ところで日産の西川社長もスナール会長も「両社の対等な関係」という言葉を何度も口にします。
しかし果たして現状において「両者の対等な関係」は実現できるのでしょうか?
答えはNOです。
なぜでしょうか?
この疑問を解説しながら、会社法における「議決権割合」の持つ重要性を確認していきましょう。
普通決議と特別決議
本題に入る前に、株主総会とその決議事項について簡単に説明します。
まず株主総会とは会社の最高意思決定機関とされ、会社にとって基本的な方針や重要事項が決定される会議のことをいいます。
言うまでもなく会社の所有者は株主です。
その株主が参加する株主総会で大事なことを決めるのは当然のことですよね。
そして株主総会では様々な決議が行われますが、決議の種類は主に3種類に分けることができます。
普通決議、特別決議、特殊決議です。
このうち特に重要な普通決議と特別決議について確認しましょう。
◆普通決議
簡単に言うと「株主の50%超が株主総会に出席し、その出席した株主のうち50%超が賛成したら成立する」決議のことです。
利益処分(配当額の決定)や取締役・監査役の選任などが普通決議に該当します。
◆特別決議
簡単に言うと「株主の50%超が株主総会に出席し、その出席した株主のうち2/3以上(66.7%以上)が賛成したら成立する」決議のことです。
定款変更、取締役等の解任、会社の合併・解散などが特別決議に該当します。
会社にとってより重要な事項は、必要な賛成割合を高めて成立のハードルを高く設定しましょう、ということです。
少し難しい話になりました。
それでは本題に入りましょう。
ルノーの日産に対する議決権割合
ルノーは日産に43%出資しています。(2018年11月30日現在)
ここで出資割合とは持株割合のこと、すなわち議決権割合をいいます。
日産が発行している株式のうち43%はルノーが握っています。
そのルノーが日産の株主総会決議において反対票を投じたら…?
ルノー以外の株主の議決権割合は 100% - 43% = 56% です。
56%すべての株主が賛成に回れば普通決議であれば可決できます。
しかし特別決議は可決できません。
56% < 66.7%
であるからです。
日産が株主総会で「定款を変更したい」「会社を合併したい」と思っても、ルノーに反対されたら終わり(棄権されても終わり)。
可決できないのです。
日産のルノーに対する議決権割合
一方で日産はルノーに15%出資しています。(2018年11月30日現在)
議決権割合も15%、と思いきや…違います。
ここでフランスの法律が登場します。
フランスには「40%以上の出資を受ける子会社(つまり日産)は、親会社(つまりルノー)の株式を保有していても株主総会で議案の賛否を決める議決権を持つことができない」という法律があるのです。
すなわち日産のルノーに対する議決権割合は0%です。
ルノーが株主総会で決議する事項について、日産に反対されたところで痛くも痒くもないのです。
このように、ルノーは日産株を43%保有することで日産の経営に干渉して強い影響力を行使することができます。
反対に日産はルノー株を15%(議決権割合に至っては0%)しか所有していないため、ルノーの経営陣に物申すことができません。
このような状態で両者が「対等な関係」でいられる訳がないですね。
現状ではルノー上位・日産下位という構図です。
ルノーと日産。
この議決権割合の差を解消しないことには、西川社長やスナール会長がどれだけ「対等な関係」と言ったところで虚しく響くだけでしょう。
まとめ
本記事では出資割合や議決権割合によって相手の会社の経営に影響を与えたり、逆に影響を受けたりすることがあることを解説してみました。
会社の力関係を見る際にはこれらの要素を考慮すべきであることを理解していただければ幸いです。
編集後記
日産株主総会の開催場所はパシフィコ横浜でした!
筆者にはランドマークタワーにある飲食店で3年ほど働いていた過去があり、横浜はとても懐かしい場所。
そのお店は閉店してしまいましたが、みなとみらい地区は何となくホッとできる場所です。
写真は筆者お気に入りの場所です。
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