昨年(平成30年)12月に平成31年度与党税制改正大綱が発表されました。
そこでは所得税法上の寡婦控除を、未婚の(婚姻歴のない)シングルマザーにも適用すべきか否かが議論されたようです
最終的には地方税法上の取扱いについてのみ適用するという結論となり、所得税法上の改正は見送られました。
この経緯と寡婦控除(寡夫控除を含む。以下同じ)について考察します。
寡婦控除とは
まず所得税法における寡婦控除について簡単に説明します。
(制度解説が本題ではないため簡単に)
寡婦控除とは、配偶者と死別または離婚したことにより独身となった人が一定の要件を満たす場合に所得控除を受けられる制度のこと。
対象者は配偶者と死別または離婚してから婚姻をしていない人、または配偶者の生死が明らかでない人です。
詳細は以下のとおりです。
個別化・多様化する家族の定義
さてこの寡婦控除。
税制調査会などで議論されていたのは、法律婚を解消した人たちにしか認められていない現行制度の対象に事実婚を解消した人たちにも認めてあげないと不公平では?というもの。
なんとナンセンスな議論をしているものか、と筆者は呆れてしまいました。
時代遅れ感も甚だしいでしょう。
従来の家族観が崩壊し「結婚」や「離婚」についての価値観が個別化かつ多様化している現代において、このような議論をしていること自体が時間のムダです。
法律婚や事実婚といった価値観を議論に持ち込めば様々な矛盾が生じてくるのは明白です。
一例を挙げてみましょう。
- 法律婚の関係が破綻し別居中だが、離婚届を提出するまでに至っていない人たち → 制度の対象外となってしまう
- 法律婚を解消後、新しいパートナーに巡り合えたが事実婚を選択している人たち → 制度の対象となってしまう
- 事実婚か否かの判断基準は?同居していることと事実婚していることの違いをどう証明するのか?
寡婦控除の制度自体に関する問題もあります。
- 寡婦に該当したとしても経済的に裕福な人たちが一定数いるのでは?
- 適用要件が男女で異なるのは男女平等の原則に反するのでは?
以上のことから寡婦控除は廃止すべきというのが筆者の考えです。
家族構成よりも担税力で救済する
ただし現実問題として、子供を持つひとり親世帯に経済的に困窮している方が多いということは事実です。
そういった人たちを切り捨てることはあってはなりません。
そうであれば、寡婦控除ではなく所得に応じた控除(基礎控除や扶養控除等)を充実させて、このような方々を救済すれば良いのではないでしょうか。
家族形態に着目するのではなく、担税力(所得)に着目して制度を再構築すれば良いだけの話です。
家族観が多様化した現代において「寡婦」という括りで一定範囲の人たちを抽出するのは無理があります。
寡婦控除というカタチにこだわることには限界があるでしょう。
所得に応じた控除をさらに充実させることで、寡婦か否かに関わらず本当に経済的に困っている人たちの負担を軽くできるような制度が求められているのではないでしょうか。
まとめ
- 寡婦控除とは、配偶者と死別または離婚した人が一定の要件を満たす場合に控除を受けられる制度
- 家族の意義が個別化・多様化している
- 寡婦控除ではなく基礎控除や扶養控除を充実させていくべきである
編集後記
梅雨の期間中にサクサク読みすすめた本です。
またブログでレビューします (^_^)/~
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